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いより通信 vol.213 (2022年11月号)

「シフト制」勤務の労働時間設定の注意点

みなさん、こんにちは。
社労士の井寄です。

11月に入り、朝晩は肌寒くなりました。
体調を崩されないようご注意くださいね。

さて、判決文の詳細は確認ができておりませんが
報道によると、先日、名古屋地裁で、「1か月単位の変形労働制導入の場合は
すべての勤務シフトを就業規則に記載が必要である」と
される判断がなされたようです。

*情報は毎日新聞報道より

ご存じのように労働基準法32条には法定労働時間数が定められています。
1日については8時間、週においては40時間を超えて労働させてはいけないという
規定です。
 

労働契約は上記原則内でしか結ぶことはできず、所定労働時間を超えて
残業させる場合は、事前に労働者代表もしくは
労働者の過半数が加入する労働組合と36協定を結んで
事業所を管轄する労基署に提出しなければなりません。

ただし、「残業」という形ではなく、そもそも1日10時間勤務という
シフトを組む必要がある場合(24時間営業の店舗や飲食店など営業時間が長いケース)は
1か月単位の変形労働時間制 もしくは 1年単位の変形労働時間制 という
労基法に定める「変形労働時間制」という制度をつかって
1か月を平均して週40時間勤務にする、若しくは、1年を平均して週40時間勤務にする
という方法を選択することが可能です。

いずれも就業規則に記載が必要で、1年単位の変形労働時間制については
1年間の出勤日カレンダーを作成して、労働者代表と協定を結び
労基署に届出が必要になります。

ただし、飲食店などなど、「1年先のスケジュールまで決められない」という場合も多く
労基署への届出は必要なく、就業規則への記載だけで導入可能な
「1か月単位の変形労働時間制」を導入しているケースが多く、
今回、判決がでた日本マクドナルドも「1か月単位の変形労働時間制」を
導入し、その旨を就業規則に記載していましたが、
店舗によってシフトの決め方が異なるため
「日々の労働時間数はシフトによる」と記載していた、
もしくは代表的なシフト時間のみ記載していた可能性もあります。

裁判所はそれに対し、すべてのシフト時間を就業規則に記載していなければ
変形労働時間制は無効とし
労基法32条の原則に戻って1日8時間超 週40時間超になる時間についての
割増賃金の支払いを命じたようです。

飲食店やコンビニエンスストア等の場合、正社員はともかく、アルバイトの場合
1日の標準労働時間数も決まっていないケースも多く、アルバイトが希望する時間を
シフトに入れるという方法をとられているケースも多いと考えられます。

例えば10時勤務開始であった場合で1勤務2時間以上としていた場合
10時から12時、10時~13時・・・・10時~22時等、
限りなくシフトのパターンが生じます。
開始時刻が0時、1時・・・23時と23パターンあって
終了時刻も20パターンあるとすれば460通りになります。
始業開始および終了時刻を30分単位で設定していたら1020通りを
就業規則に記載する必要が生じます。

もちろん1日の勤務時間数を固定すること、
(例えば6時間・7時間・8時間・9時間・10時間など)で
パターンは減りますが、それでもかなりのパターン数になるかと思います。

これまで1か月単位の変形労働時間制は、1か月ごとに、
柔軟にシフトを組んで労働時間数を決めることができる柔軟性の高い制度として
捉えられていた面もありますが、「違法」と判断されないよう、
「シフトパターンをすべて就業規則に入れ込む」を
意識していただくことが必要かと考えます。

 

 


 

11月給与の注意事項

1)年末調整の準備をしましょう

国税庁:年末調整がよくわかるページ


2)2023年4月1日から中小企業においても月60時間以上の時間外労働に対する割増賃金率が150%以上になります。

厚生労働省:割増賃金率改定

今月の気づき

10月末に法政大学で開催された労働法学会に参加してきました。
大学院に通い始めてから労働法学会に入会させていただいております。

今回、昨年まで同じゼミで研究をしており、今春から大学教員になった友人が
研究発表をしました。
労働法の大御所先生たちからの質問にも動じることなく壇上でこたえる友人の姿は
すごくかっこよくて私も誇らしい気持ちになりました。

そして、そのあとのワークショップでも、若手研究者の方の発表と
会場とのやりとりを聞いていて、めちゃめちゃ刺激を受けて
勉強になりました

実はワークショップでは、勇気を振り絞って質問をしてみました。
質問をする、と決めてから心臓が高鳴り、手も震える勢いでしたが
疑問点を聞くことができてよかったです。

普段、論文を通じてしか知ることがない先生方が目の前にいらっしゃることに
大コーフンでした。
ここ2年間はオンライン開催で、発表者の先生方のお顔しか見ることができませんでした。
今回は久しぶりのリアル開催で本当によかったです。

 

(2022年11月発行)

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