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いより通信 vol.199 (2021年09月号)

直接雇用(自社社員)と外注(業務委託)の違い

みなさん、こんにちは!
社労士の井寄です。

感染症の感染者数が増加し、まだまだ
余談を許さない状況が続いていますが
お変わりなくお過ごしでしょうか。

飲食店ほか、長引く緊急事態宣言の影響を
大きく受けている業種も多いかと思います。

大変な状況ですが、来月(10月)から最低賃金が大幅に上がります。
参考)厚生労働省 令和3年度都道府県別最低賃金

働く人の立場で考えると、最低賃金が上がることは良いことです。
他方、経営者の立場で考えると、最低賃金で雇用して
なんとか経営が成り立っているというビジネスモデルもあり
そうしたところでは、最低賃金が上がると、
働く人ひとりあたりの勤務のシフトを減らしたり、
退職者が出ても新たな採用を控える等
会社が拠出できる総額人件費の中でなんとか
やりくりをせざるを得ないことになります。

そうなると、働く人にとってもマイナスの影響を及ぼすことになります。
また、経営者は、支払うお金と、得れる効果を天秤にかけて
その支出をすべきかどうかの決断をします。

これだけ賃金を払うのであればのであれば、
これだけの仕事をしてほしい、
それが得られないのであれば、直接雇用ではなく
必要なときに必要な成果を得られる
外注(業務委託)に仕事を出した方が良いのではないか、
という考えが、最低賃金が上がることで生じやすくなります。

直接雇用(自社社員)と外注(業務委託)と
会社にとってはどちらがメリットがあるのか
その違いを私なりに考えてみました。

直接雇用の場合は「労働者」となりますので
会社は労働基準法等の制約を受けることになります。
社会保険の加入義務もあり、
会社は社会保険料の半分を負担しなければなりません。

また、労働者に対する安全配慮義務も課されていますので
職場環境に配慮したり、体調を崩している労働者がいれば
医療機関への受診を勧めたり、
受診の結果を元に業務量の調整をするなどしなければなりません。

このような様々な制約はありますが、別の見方をすると
これらの制約は、雇い入れた従業員に対し、会社は指揮命令権を持ち
会社が必要と考える仕事を、会社が決めたルールにのっとって
やってもらうことができるという会社が持つ裁量権が大きい
(=労働者は従わざるを得ない)からこそ
生じるものだと考えることができます。

他方、外注(業務委託)だと、労働者ではないため
労働基準法等の制約は受けません。
契約で決めた業務を依頼し、契約で決めた報酬を支払うのみで
社会保険料等の負担もありませんし
安全配慮義務も課されていません。

しかし、外注の場合、自社社員と違い、相手方にも決定権があります。
報酬についても、先方の要望に合わなければ
仕事を受けてもらえないですし、相手も仕事を選ぶことができるので、
こちらが仕事を出したくとも、先方が「今、受けられません」
と言われることも十分ありえます。

直接雇用の労働者であれば、急な仕事のときは残業命令もできます。
本来業務ではない担当者にも手伝いを命じることができます。
そのような「安定した労働力」を得られるのは大きなメリットですが
仕事がないときにも、当然給料は発生します。

私は安定した経営のためと、自社のクオリティを保つためには
主要業務については自社雇用が必須だと考えています。
ただ、現在のような先行き不透明な経済状況となったときに
固定費の負担が重いと身動きがとりにくいのも事実であるため
直接雇用のみではなく、外注も使うことを視野に入れられたら
いかがでしょうか。

昨年からの感染症対策で、出勤調整をしたり
テレワーク導入に際し、業務の洗い出しと整理を
された会社様も多くあるようです。

その洗い出しを元に、内部でしかできない仕事もしくは
内部でやった方がすスムーズである仕事と
外注可能な仕事の切り分けを行い、
一部、外注(アウトソーシング)に出すのも
ひとつの選択肢かもしれません。

外注先の技量の見極めが必要ですが、フリーランスのノウハウを
うまく使うことで自社社員の活性化にもつながると
考えています。

今後、直接雇用という形態は減少していき
プロジェクトごとに、必要な能力を持つ人が集められ
共同体として業務を完了させる形態が増えていくと
考える労働法学者もいます。

これまでのやり方に固執せず、今後に向けての
変革の第一歩とするタイミングかもしれません。

 

9月給与の注意事項

1)算定基礎届の結果に沿って、標準報酬月額の変更をしましょう。
社会保険料を翌月徴収している場合は10月給与の控除額からの変更となります。
9月末退職者の社会保険料徴収の際に、9月は改定後の標準報酬月額となります。

2)新型コロナウイルス感染拡大により小学校等が休校になった場合に、
対象労働者に特別有給を与えて休ませた場合の助成金について、
昨年あった小学校等休業対応助成金は終了しています。

それに代わる制度として両立支援助成金(育児休業等支援コース)
が準備されています。
こちらは新型コロナウイルスに関連して小学生以下の子どもを育てる労働者が、
小学校等が休校になったことを理由として会社を休まざるを得なくなった場合に
会社が、特別有給を与えることを「制度として導入」し、
利用者が出た場合に一人当たり5万円(上限10名まで)が
助成金として支給されるものです。

昨年の助成金は、対象労働者を特別有給で休ませたという
実績のみで支給さされていましたが
今回の分は特別有給を「会社の制度として導入」する必要があり
制度として導入したからには、
今後、対象労働者(助成金対象の有無を問わず)から
申出があった場合は、必ず特別有給を付与することになります。
助成金対象となるのは10名までです。
 

今月の気づき

自粛生活にも慣れて、淡々と日々を過ごしています。
事務所には毎日出勤しています。
面談での打ち合わせは全く0ではなく
月に数回、訪問もしくは来所でご対応しています。

昨年は度重なる改正で振り回された雇用調整助成金も
今年は5月以降、一部取り扱いが変更になりましたが
大きな支障なく、給与確定の時点で書類も準備できるようになりました。

ありがたいことに新規のお客様も増えて
スタッフと一緒にご対応させていただいています。

業務量が一番大きいお客様とのやりとりについても
各種業務ソフトを駆使して効率化のみならず
コスト削減も視野に入れて、お客様にご提案中です。

今、まったく止めていることが出張です。
今まで月1?2回は東京に行っていたのを
5月の終わり以降行っていません。

晩の会食も劇的に減ったので、それで時間ができたんだろうと
考えています。

大学院の在籍期間が今年度いっぱいのため
なんとか論文を提出したいと日々もがいていますが
なかなか一筋縄ではいかない状態です。

多くの人に大きな影響を及ぼしたコロナ禍ですが
私自身は、自分自身の時間の使い方、仕事の進め方
お金の使い方、他人との関係性のあり方の
整理、見直しをするよい機会だったと考えています。

しばらく、今のペースで、周りの環境にはできるだけ
振り回されず、自分がやると決めたこと、
自分が必要とされる場面を見極めて
丁寧に時間を使いたいと考えています。

 

(2021年09月発行)

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