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いより通信 vol.209 (2022年07月号)

職場における心理的安全性の高め方

みなさん、こんにちは。
社労士の井寄です。

私が住む関西では、あっという間に
梅雨が明けました。
炎天下の日が続いています。
電力不足も心配ですが水不足も心配しています。

さて、昨年から、ハラスメント防止研修の依頼もしくは
社員からのハラスメント相談にどう対応するかというご相談が増えています。

以前からハラスメント研修を重ねておられる
お客様からは、ハラスメントの法的定義などの
基礎知識も大切であるが、「やってはいけないこと」を
伝えるだけでは、不十分である。

そこにいるだけで社員が不安を感じるような職場であることを問題と捉え
誰もが安心して仕事ができる、少なくともその空間で
時間を過ごすことができる環境をどうすればつくりだせるか
職場のチームメンバーそれぞれが意識を向けるような
研修内容にしてほしい、という話をいただくことが増えました。

人は「やってはいけない」を押し付けると、行動がとれなくなります。
「どのように職場の仲間と接することが望ましいのか」を伝えてほしいというご要望です。

私はコーチングやカウンセリングの能力はありません。
ただ、現実問題として、ハラスメントのある職場では
意見や思いを伝えにくくなると感じています。
何か言うと、叱られたり否定される可能性が高いからです。

同僚がきつめの言葉が浴びせられているのに気づいても
なかなか助け舟は出せません。「とにかく今をやりすごしたい」、
「問題が拡大化するのを避けたい」と誰もが考えるからです。


結果、そのような職場環境に耐えられず
退職を決意したり、中には精神的につらくなる人がでてきます。
それが続くと、会社として、病み、弱体化してしまうのです。

これまで会社は、「不安」と「罰」を与えることで
従業員を鼓舞してきたと言われます。

頑張れば(成果を出せば)昇給します、ボーナスがもらえます、
役職がつきます、は、裏を返せば、がんばらなければ
昇給もしないし、ボーナスも出ない、ポジションもなくなり
会社に居場所がなくなる、という「不安」を与えることになります。

そして、就業規則をたてに、遅刻・早退を繰り返す、
ハラスメント行為を行うなど、禁止行為をする社員に対しては
懲戒処分を行う=「罰」を与えるとすることで
勤怠不良や、ハラスメント行為の防止をしているつもりが
結果として、「会社が言うから〇〇しない」という社員を
生み出すことにつながっていました。

勤怠不良も他者へのハラスメント行為も、会社が言うから、
就業規則に書かれているからダメなのではなく
社会人としてのマナー、その前にそれらの行為は他人に
迷惑をかけ自分の社会的信用が損なわれる行為であるので
本来は社員自分自身で規制すべきことになります。
会社がやるべきことは、自らそこに気づく社員の育成です。

経済が右肩上がりの時代はおわり、
変化が激しい世の中で、指揮命令系統は会社のトップダウン
それに従う社員が重用されるという考えでは生き残れません。

「会社が言うようにやっていれば間違いないので従え」が
「不安」と「罰」を与える社員の管理方法です。

今、求められるのは、社員ひとりひとりが
現場で、変化を感じ、積極的に意見を交わし
工夫や創造を重ね、知恵を合わせて問題解決をする
職場をつくりあげることではないでしょうか。

そのためには、個人の適性を見極め
適材適所の人事配置を行う必要があります。

社員が、組織やチーム全体の成果に向けて
率直な意見や、疑問を誰もが気兼ねなく言える
組織を「心理的安全性が高い」職場と言われるそうです。

参考)石井遼介『心理的安全性のつくりかた』(2020年、日本能率協会マネジメントセンター)
松村亜里『心理的安全性の高め方』(2022年、WAVE出版)


コロナ禍を経て、仕事のやり方を変えている会社も増えています。
社員が定着しにくい、職場に活気がない(低迷ムードである)など
何か変えていかないと、と感じる会社は、ぜひ一度
自社の職場は社員に「心理的安全性」を感じてもらえるものなのか
検討してみてください。

7月給与の注意事項

1)労働保険料年度更新・および算定基礎届の作成・届出の期限が7月11日です。

2)夏季賞与の支給がある場合、賞与支払い届の提出をお忘れなく

3)2022年10月から、育児・介護休業法の改正および、社会保険加入者数100名以上の会社について、
短時間労働者への保険適用拡大が始まります。
前者については規定の改正および改正後の制度の周知・確認、
後者については、新たに保険適用となる短時間労働者への事前の告知・説明を行うようにしましょう。
 

今月の気づき

2022年も、もう半分が終わってしまいました。
月日が流れるのが本当に早いです。

今年に入って、40代・50代の知人で
病気が見つかり入院治療をしていたり
亡くなってしまった知人もいて
昨年は健康診断に行けずじまいでしたので
今年は初めてPET健診とMRI検査を含む
人間ドックにいってきました。

論文執筆等もあり、睡眠が十分とれていないため
少し心配していたのですが、まったく異常はありませんでした。

これで安心して、仕事も論文も進めることができます。
とにかく、今年は論文を終わらせたいので
体調を整えつつ、時間をつくりたいと考えています。

そして、本稿でごご紹介した『心理的安全性のつくりかた』他
をよく読んで、自分の考えに取り込み、これまでの規則で
会社を守る(もちろんこちらも重要ですが)一辺倒ではなく
成長を続けることができる組織の作り方を研究したいと感じました。

常々、ハラスメント防止研修をしていて
「こうした行為がハラスメントです」
「ハラスメントをしたら懲戒処分になります」
だけでは、効果はないと考えていました。

組織のひとりひとりが、「会社が言うからやらない」ではなく
自分自身の価値観として「他人を傷つける言動は控える」を
持ってもらうことが必要だと感じていました。

まずは自分が勉強し、お客様に必要な情報をお伝えしたいと考えています。

 


 

(2022年07月発行)

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