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いより通信 vol.170 (2019年04月号)

労働条件を明確にしましょう

みなさん、こんにちは。
新年度になりました。
本日、新元号の発表ですね。

働き方改革関連法も施行になり
秋には消費税の引き上げも予定されています。
今年度は変革の年となりそうです。

人材不足は引き続きですが
単に「人手」で足りる職種は
人件費を引き上げて人手を集めるしか
なくなっており、人件費の負担により
収益が悪化しています。

人手不足および労働時間規制への対応で
営業時間の短縮や定休日の設置などによる
売上げ減も深刻なようです。

政府は生産性の向上での
働き方改革をめざしているようですが
現場ではなかなか対応が追いついていないのでは
ないでしょうか。

大手スーパーでは、最近セルフレジの導入が
進んでいるようですが、すべての業種・職種で
人がやっている作業を機械に置きかえることが
できるわけではありません。

特に設備投資に十分な資金を投入することができない
中小零細企業では、人手に頼るしかなく
労働法制の規制だけが厳しくなる中で
大変な状況になるかと考えます。

経営側はそのような苦しみの中にあるのですが
他方、働く側は、様々な情報を得て
より自分自身の労働環境に対してシビアな目を
向けるようになっています。

求職者有利な状況が続いているため
「嫌なら辞めればよい」と考える人が増えているように感じます。

これまでであれば、自社の労働条件が多少おかしいと思っても
「こんなものだ」と受け止めていた人達が
「おかしい」と声を上げ、行動に示すようになっています。

例えば、始業時刻前の強制参加のミーティングや
終業時刻後の清掃・日報作成などについて
(これらが使用者の指揮命令であれば労働時間です)
「おかしい」と声をあげ、終業時刻前に清掃を始め
日報作成も終え、終業時刻ぴったりに帰る社員が
いたとき、経営側として「うちの会社では・・・」という
説教は通用しません。

例えば、残業についても「業務命令」として社員に命じることはできますが
その根拠が必要です。

「仕事が終わっていないんだから残ってやるのは当たり前」という
論理は通用しません。

残業をさせるためには、労働契約上の根拠が必要です。
入社時に労働者に示す雇用契約書もしくは労働条件通知書に
所定労働時間、所定休日を示すとともに、残業や休日出勤の発生が
見込まれる場合は、その旨を記載しなければなりません。

常時雇用する労働者が10名以上の場合は、就業規則の作成・届出が
労働基準法で定められていますので、就業規則の中にその旨の記載をし
雇用契約書等には、「詳細は就業規則による」としてもよいでしょう。

さらに、残業や所定休日の労働により、法定労働時間を超えて
労働者を勤務させる場合は、時間外協定(36協定)を締結して
事業所を管轄する労働基準監督署に届出する義務があります。

法律上は36協定を締結・届出をしていなければ
法定労働時間(1週40時間、1日8時間)を超えて
労働者を働かせることはできません。

時間外協定については、従業員が1人であっても
法定労働時間を超えて働かせることが見込まれる場合は
締結・届出が必須です。

入社時の書面(雇用契約書もしくは労働条件通知書)による
労働条件の明示についても、事業規模に関係なく必須であり
明示すべき条件についても、労働基準法15条に定めがあります。

特に小さな事業所では、これまであいまいにしてきたことも
あるかと思いますが思いますが、自社の労働条件・労働環境を
この機会にきちんと向き合い、法令にあっていないことについては
正していき、働く側にそっぽを向かれない労働環境を整えましょう。

そして、雇用契約書(もしくは労働条件通知書)や
就業規則により労働条件を明確化することをお勧めします。

追記)
平成31年4月1日より、労働基準法施行規則が改正になり
労働基準法15条に定める労働条件の明示につき
これまで「書面の交付」に限られておりましたが
労働者が希望した場合には、FAXや電子メール、SNS等でも
明示ができるようになりできるようになりました。


参考)厚生労働省「労働基準法施行規則」改正のお知らせ


 

 

4月給与の注意事項

1)健康保険料・介護保険料の料率が3月分より変更になっています。

参考)協会けんぽ 平成31年度 保険料額表

 

2)平成31年度雇用保険料率は前年と同じです。

参考)厚生労働省 平成31年度雇用保険料率

 

今月の気づき

先日、テレビ局より取材申込みがあり、
3月23日(土)朝5時半から放映のTBS「上田晋也のサタデージャーナル」という
番組に、25秒くらい登場しました。

意見を求められたテーマは「働き方改革が中小企業に及ぼす影響」でした。
私が2018年8月に毎日新聞経済プレミアさんに寄稿した記事がきっかけで
取材対象となったようです。

冒頭のコラムでは、小さな会社であったとしても、労基法の適用があるため
働き方改革法に沿うべく、自社の労働環境を整えるべきであると書きましたが
現実は、人手不足の中で、有給の強制消化や、時間外労働の上限規制
(中小企業は2020年4月1日以降適用)とか厳しいよなーと感じており
大企業が法規制を受けて、どんどん「キレイな身体」になっていく中で
大企業の業務改善のしわ寄せは、中小企業や、多くのフリーランスにいってると
感じている次第です。

しかし、大手企業の中には大規模な希望退職の募集により、
人員削減をしていているところも多くあり、すべてがすべて
好業績ではありません。
むしろ、高収益体質を維持するために、不採算部門を積極的に
切り捨てているというべきかもしれません。

昨年の秋以降、中小企業ではすでに
景気後退を感じているところも増えており
働き方改革よりも、仕事があるうちに仕事を取っておきたいと
考えている企業も多いのでは、と感じています。

仕事をして利益をあげることは、経営者の冨を増やすためではなく
企業の存続や雇用の維持、労働者の所得を増やすために必須です。

少子高齢化が進むわが国の今後を見据えた上での政策であることは
重々承知の上で、それでもなお、私の周りの経営者の方たち
さらにそこで働く従業員さんたちが、不安を感じることないような
真に納得がした上で実現することができる内容であるとよいなと感じています。

(2019年04月発行)

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