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いより通信 vol.165 (2018年11月号)

アルバイト・パート社員等の有給について

みなさん、こんにちは。
社会保険保険労務士の井寄です。

2018年があと2か月になりました。
月日が経つのは本当に早いですね!

私の事務所では、お客様の給与計算業務も受けておりますため
これから年末調整と賞与計算で忙しくなります。

特に今年は配偶者控除の大幅な見直しがあったため
お客様からのからのお問い合わせが増えると予想しております。
実務を担当してもらっているスタッフには研修に参加してもらって
最新の知識を仕入れてもらう予定にしております。

配偶者控除は、パートで働く妻がいる社員さんにとっては
関心が高いことかと思いますので、各種ご質問にしっかり
お答えできるように準備しておきたいと思います。

さて、パート社員の控除対象配偶者(今年からは「源泉控除対象配偶者」)となるための
年間給与額が103万円以下から150万円以下に拡大したことに伴う現象なのか
もしくは、パート社員の権利意識の高まりなのか、
パート社員から有給を取りたいと言われているが、どうすればよいか、との
ご相談が増えています。

これまで、11月になると、年間103万円の枠を考えて、
勤務調整をしていたパートさん達が
今年は勤務調整をしなくとも働くことができるし、
有給も取ることができる、と考えておられるのでしょうか。

もちろん会社側としては、パート社員にも有給付与をしなければならないという
意識はありますが、実際に請求されたことがなかったため、
取扱いに戸惑っているという感じです。

1日の労働時間数や週の勤務日数が固定のパート社員であれば
就労日について、有給の申請がきたときに、
就労日の労働時間数に対する賃金を支払えば済みます。

ただし、シフト勤務の職場で、週1日の労働時間数や週の勤務日数が一定ではない場合
①有給の付与日数をどうすればよいか
②有給付与の際に「出勤率80%以上」の要件があるが、シフトを組む段階で
出勤できない日は外している場合、それらの日は出勤率のカウントには含まれないのか
③1日の勤務時間数が一定ではない場合、有給を取ったときに何時間分の賃金を支払えばよいのか

の問題が生じます。

①有給の付与日数をどうすればよいか
労働基準法39条および労働基準法施行規則24条3に、
所定労働日数が週4日以下かつ週30時間未満の労働者に対する
勤続年数に応じた有給の付与日数が定められています。
会社は就業規則等で、法律で定められた有給日数以上
(同じ日数でも構わない)の有給を対象労働者に付与しなければなりません。

まずは自社の就業規則に、労基法の定めを下回らない範囲で
有給の日数を定めましょう。
有給の付与日数は、勤続年数+週の所定労働日数
もしくは1年間の所定労働日数で決めることができます。
週の所定労働日数が一定ではない場合は
1年間の所定労働日数で付与日数を決めるようにしましょう。

月の勤務日数も、労働者と会社の都合の調整等で決めており、
月ごとにバラバラである場合は、有給付与の前年1年間の労働日数を
参考に決めるなど、ルールを決めて運用しましょう。
 

②有給付与の際に「出勤率80%以上」の要件があるが、シフトを組む段階で
出勤できない日は外している場合、それらの日は出勤率のカウントには含まれないのか


1か月の所定労働日数の明確な決まりがない場合(例えば月15日勤務等の)
シフトに入っている日が所定労働日として出勤率のカウントをすべきでしょう。
会社側がシフトにに入ってもらいたかったけれども、
予定があって休んだという日がある場合は
勤務表に「欠勤」の表示をする等、
所定労働日であったことを示す必要があります。

その場合①での有給付与日数をカウントする際には、
欠勤日も含めて所定労働日数として
計算して有給を付与することになります。
(所定労働日数が多いほど、有給の付与日数も増える)


③1日の勤務時間数が一定ではない場合、有給を取ったときに何時間分の賃金を支払えばよいのか

就業規則で「有給を取った場合は、所定労働時間勤務した場合に支払う賃金を支払う」
としている場合、有給を取った日にシフトで決められた労働時間数分の
賃金を支払う必要があると考えられるでしょう。

ただし、病気等で急に休むことになった場合は、その対応でいけますが、
個人的な予定のため、あらかじめ有給申請が出てくる場合は
有給の日を外してシフトを組むことになるかと考えます。

そうなるとそもそもシフトには入っていないため
その日に何時間勤務であったのかはわからないことになります。

こちらも就業規則で決めることができます。
労基法では、有給を取得した日に対する賃金は
①労働基準法12条に定める平均賃金で支払う、
②もしくは通常勤務した場合に支払われる賃金とされています。
(労使協定がある場合は社会保険の標準報酬日額でも構わないとされていますが
社会保険の加入要件を満たさないパート社員も多いのでここでは割愛します)

②を採用する場合、本事例では「通常勤務した場合に支払われる賃金」
が確定できないため(1日の労働時間数が一定ではない)
例えば、有給付与日の前年1年間の平均所定労働時間数から
1日あたりの所定労働時間数を計算して
有給を取得した日は「時間単価×1日あたりの平均所定労働時間数」で計算した
賃金を支払う等での対応も可能でしょう。

いずれにせよ、不公平がないように、就業規則等にルールを定めて
公平な運用をする必要があります。
その他、パート社員の有給の半休利用を認めるか否かについても、
記載しておきましょう。
(こちらも1日の所定労働時間数が一定ではない場合、
半休とは何時間を指すのかの判断がしにくいケースが考えられます)

有給のみならず、社会保険や雇用保険の加入についても
パート社員から会社に対して要望が出されるケースも増えています。

「パートだから・・」という意識は捨て、パート社員であっても
「労働者」という意味では「正社員」と同じです。
労基法その他の労働法令は同じように適用があります。

社会保険・雇用保険の適用基準等も確認の上
社員側から文句を言われることのない労務管理を心掛けるようにしましょう。

11月給与の注意事項

1)年末調整の準備をしましょう。今年度は配偶者控除について大幅な変更があります。国税庁のホームページに「配偶者控除および配偶者特別控除の見直しに関するFAQ」が掲載されていますのでご確認ください。

国税庁:「配偶者控除および配偶者特別控除の見直しに関するFAQ」

今月の気づき

9月の敬老の日、秋分の日の振替休日、10月に入っての体育の日と、
今年は9月中旬から10月の中旬にかけての4週間のうち3週が月曜日が
お休みという暦になっていたため、営業日が減り、かなり慌ただしかったです。

休みがあっても、やらなければならない業務量は同じです。
普段、職員さんにお願いしている業務もすべて、土日祝に
私がやらねばならないこととなりました。

土日祝は、大学院の論文の執筆や、商業出版の原稿執筆に
充てており、まぁまぁ困った状況となりました。

国も労働時間数の短縮を推し進めておりますし
休日労働や残業の多い会社は働く人に嫌われる傾向にあります。
私と同じように、経営者やフリーランスなど労働法の規制を受けずに
働いている人がそのしわ寄せを引き受けることになるんだなぁと
実感しました。

今年は年末年始の休暇も長くなりそうですし
来年のゴールデンウィークに至っては・・・・・で
今から心の準備をしておきたいと思います。

 

(2018年11月発行)

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