いより通信:タイムリーな社会保険情報・助成金情報労務相談事例などを発信中!

いより通信 vol.148 (2017年06月号)

「働き方改革」って何?

みなさん、こんにちは。
社労士の井寄です。

あっという間に新緑のの季節となり
私が住む大阪は汗ばむような気候です。
またあの暑い日々がやってくるのですね。

さて、「働き方改革」という文字を新聞記事で見ない日がないくらい
「働き方改革」ブーム(?)です。

ただ「働き方改革」という言葉だけが先走りして
その本質がわからないまま、言われるがままに
残業をしないようにしたり、とりあえず
会社に長居しないようにしている、という人も
中にはいらっしゃるのではないでしょうか。

少し前になりますが、平成29年3月28日に政府より示された
「働き方改革実行計画」をいっしょに見ていこうと思います。

■働き方改革の意義

日本経済の再生を実現するためには、投資や
イノベーションの促進をを通じた付加価値生産性の向上と
労働参加率の向上を図る意義がある。

一億総活躍の国創りをするための最大のチャレンジとして
「働き方改革」がある。

 

ひとりひとりが、その意思や能力、置かれた個人の事情に応じて
多様で柔軟な働き方を選択可能とする社会を追求する。
働き方改革とは、働く人の視点に立って、労働制度の抜本的改革を
行い、企業文化や風土を変えようとするものである。

「働き方改革」こそが、労働生産性を改善するための最良の手段である。

(井寄コメント)
国が「企業文化や風土を変える」というところにまで踏み込むことに
驚いています。本気で改革に取り組むという意気込みを示すものだと
考えますが・・・

 

■働き方改革の実現のために取り組むべき課題
 
注)★は井寄が考える重要度です。★★★が最重要

1)同一労働労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善 ★★☆

(井寄コメント)
 今後、どのようになるかわかりませんが、食事手当、通勤手当など
職責や職務能力に連動しない手当類については、均衡待遇とするようにという
方向になるかもしれません。正社員を含め賃金の構成や賃金を決める基準を
明確化するなど、「なぜこの人にはこの賃金なのか」の説明ができるように
しておいた方がベターベターでしょう。


2)賃金引き上げと労働生産性向上 ★☆☆

(井寄コメント)
 今年も最低賃金が引き上げられます。

 

3)罰則付時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正 ★★★

(井寄コメント)
 36協定で定める時間外労働の上限を意識するようにしましょう。
自社の実状を正確に把握する必要があります。最長で月60時間平均の
上限に対する取り締まりが厳しくなります。
代表者の選出方法等36協定の締結の手順も含め
より厳格におこなうことが求められます。

 

4)柔軟な働き方がしやすい環境整備 ★☆☆

(井寄コメント)
テレワークの導入等の検討してみましょう。


5)女性・若者の人材育成など活躍しやすい環境整備 ★☆☆

(井寄コメント)
女性の再就職支援、若者の非正規労働者の正社員化(国がやるべき施策中心)



6)病気の治療と仕事の両立支援 ★★☆

(井寄コメント)
病気を治療しながら就労を望む労働者への支援。労働条件の変更等が
必要になる場合も想定されますし、健康保持がなされるよう会社がすべき配慮等
取組が必要。今後高齢者雇用が進む中で、対応は必須になるため準備をしておいた方がよい。



7)子育て・介護等と仕事の両立、障害者の就労 ★★☆

(井寄コメント)
引き続き、子育て・介護等を行う労働者との共生を図る仕組みつくりが必要。
通常勤務の労働者の負担に対する配慮が必要。



8)雇用吸収力吸収力・付加価値の高い産業への転職・再就職支援 ★☆☆

(井寄コメント)
成長産業への人材の流動を促す(国がやるべき施策中心)



9)高齢者の就業促進 ★★☆

(井寄コメント)
引き続き、定年の引き上げ等、高齢者の就業促進のための仕組みづくりが必要。
高齢者になると疾病罹患リスクが高まるため⑥「病気の治療と両立支援」と
合わせて制度設計を。



10)外国人材の受け入れ ★★☆

(井寄コメント)
既に中小企業においても外国人材の受け入れは広まっている。
言葉・習慣の違いを乗り越えコミュニケーションを取るようにすること、
さらに、日本人と比べ、「契約」に対してシビアであることが多いので
労働条件の明確化などルールをきちんと提示することが肝要。

 

以上ざっくりとまとめてみました。
私の中で一番重要だと感じるのは
③の長時間労働是正の動きです。

これまで実質上青天井とされてきた
残業時間の上限を法律で決めて
罰則規定までつけるというのは
大きな改正になります。

労働基準監督官の業務の一部を民間(社会保険労務士等)に委託するという
話もでていますが、それは、時間外協定の違反を取り締まるためではないか、とも
言われています。

井寄のあくまでも私見ですが、同一労働同一賃金については、様子見。
何かアクションを起こすとすれば、正社員の賃金の決め方
(賃金・手当の性格や基準)を明確にしておくことです。

今すぐやるべきことは、自社の労働時間の実態調査です。
月60時間を超えて残業をしている部署がどの程度あるのか
時短はできるのか、まずは「実態」を正確に把握するようにしましょう。
 

6月給与の注意事項

1)今月から住民税額が変更になっています。

2)6月給与が確定したら算定基礎届の提出準備をしましょう

7)労働保険料年度更新の受付が始まっています。

今月の気づき

先日、京都の龍谷大学で開催された労働法学会に行ってきました。
労働法学会のレジェンド菅野和夫先生の特別講演もありました。
「現政権の労働政策は「日本的雇用システム」の全体的な改革の試みである」という
お話もありました。

労働力人口の減少より早いスピードでAIの実用化等
第四次産業が進み、「人」の労働力が必要な分野は
狭くなるのでは・・と言われています。

どんどん時代が流れていく中で
戦後の復興期に制定された労働基準法がどのように
形を変えていくのか、見逃せない展開です。

ただ、今回の「働き方改革」で出されている内容は
働く人に生産性を高めるという意識を持つことを求めるというより
企業に様々ふ負担を負わせる(のみ)となっているように感じます。

第四次産業革命が進んだときに、一番困るのは、
スキルを身につけていなかった労働者自身だと考えます。

国も労働者のキャリア支援を積極的に進めているということは
終身雇用制度は前提としておらず、産業構造の変化にともない
労働者も流動する、と考えているのではないでしょうか。

生産性向上も、働く人の意識なくしては進めることができません。
労働者がすべて「自分にいずれふりかかってくること」という
意識を持って取り組むことが必要だと私は考えています。

会社がやるべきことをやるのは社会的責任として当たり前です。
しかし、労働者も改革に積極的に取り組む意識がより求められているのです。

 

(2017年06月発行)

お問い合わせフォームはこちら