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いより通信 vol.134 (2016年04月号)

小さな会社は社長の誠意が命

みなさん、こんにちは。
新年度に入りました。
私の住んでいる大阪では桜も咲き始め
入社式・入学式にまさに花を添えています。

さて、我々社会保険労務士は小さな会社の
労務のご相談を受けることが多いお仕事です。
私の場合、従業員数20名~50名くらいの
お客様がメインなのですが、
従業員さんとのトラブルが起こったときに
遺恨を残すか残さないか、
そのトラブルが他の社員にも派生するかしないかは
社長の対応次第だと感じています。

我々は法律が何を求めているのかは
ご説明することはできます。
ただ、法律通りにやっていれば
お互いに気持ちよく終わることができるのかということでもないように感じるのです。

ある会社で、出勤状況が思わしくない従業員さんがいました。
遅刻や無断欠勤のクセがある人でした。
親元を初めて離れ、一人暮らしをしていたので
工場長が、朝に電話をかけたり、入社してから半年にわたり
親身に指導を続けた結果、休んだり遅刻をすることが
ほとんどなくなくなったのですが、年末年始休暇を
きっかけにまた休み癖が復活しました。

(勤怠不良の人は「習慣」の問題なので、根本的な治療は
本人の意思がかなり強くないと本当に難しいと感じています)

同社では作業工程を決めて業務を回していたため
急な欠勤があると、担当者の配置の変更で大変なのです。

会社もさすがに堪忍袋の緒を切らせて
「次に会社を無断欠勤したら、もう辞めてもらうことになるよ」という話をし
その後、その従業員さんとしばらく連絡が取れなくなってしまいました。

連絡が取れないので処遇についても保留のままだったのですが
突然 従業員さんの親御さんから
「息子を辞めさせるってどういうことだ!」という電話がかかってきたのです。

実際に解雇通知をしたわけでもなく
話もできていない状態だったのですが
事情を説明しても話がうまくかみ合わず
相手は「弁護士に相談する!」などヒートアップしていきました。

そんな中、社長が動きました。
その従業員さんとコンタクトを取ることに成功し
「二人で話をしたい」と申し出ました。

社長は、従業員を言いくるめてなだめようという気持ちではなく
このままだと、どこにいっても通用しないので
従業員の今後を心配した上で話し合いをしたそうです。

結果、従業員さんは「会社に迷惑を掛けて申し訳ないです」といって
退職届を提出されたそうです。
社長は次の仕事が決まるまでの足しにということで
給料の1ヶ月分相当額を退職金として払ったとのこと。

社長がおっしゃっていたのは
会社に来ているときは本当に一所懸命にやってくれてたし
うちも一所懸命育ててきたので、辞めるときにもめて
うちの会社で働いたことを「嫌な思い出」にしてほしくなかった、
とのことでした。

相談を受けていた私は、もし裁判や労働審判になったら、
もし監督署がやってきたら、の対策は考えていたのですが
「社員に向き合う」を見落としていたように感じます。

「誠意」は必ず相手に伝わると私は信じています。
問題から目をそらさずに、正面から相手に向き合うことの
大切さをこちらの社長さんから学ばせていただきました。

 

4月給与の注意事項

1)3月分保険料(4月給与控除分)より健康保険料率が変更になっています。

協会けんぽ 料率表

2)4月より雇用保険料が引き下げになる予定です(情報要確認)

厚生労働省 平成28年度雇用保険料率引き下げの法律案

 

今月の気づき

4月より大阪大学大学院法学研究科博士後期課程に進学し
労働法の研究を深めることになりました。

昨年 関西大学で修士課程(博士前期課程)を修了し
1年間の浪人生活(?)を経ての女子大生復活です。

浪人生活の1年間は、前期は関西大学大学院法学研究科で引き続き
労働法を聴講生として受講し、後期は大阪大学法学部で労働法と社会保障法を
科目履修生として受講しました。
(3月号で30年ぶりに試験を受けたことを書きましたが、おかげさまで
単位の取得が叶いました・笑)

さらに、博士論文執筆に備えて、法学研究者のためのドイツ語の研究会に
参加させていただき、7月・8月はゲーテ・インスティトゥートで初級クラスの
集中レッスンを受けました。

関西大学の指導教官からは、何か論文を書いてどこかに寄稿することを
勧められていたのですが、それは叶いませんでした。

昨春、京都大学大学院博士後期課程を受験してダメだったときに
一旦は進学はあきらめようかとも思ったのですが、まずは小さくとも続けることだと考え
聴講生や科目履修生として勉強を続けてきたことがよかったと思っています。

大きな夢があると、一気にそこに駆け上がろうと思いがちですが
高い山に登るためには準備が必要です。
まずは、小さなことでできることをやっていくことかなと思っています。

20年前に出産・育児のために会社を辞め、社会復帰をめざしたときも
同じ考えで、まずは負担の小さいパート勤務 という選択をしました。
しかし、そのパート勤務がきっかけで、今の仕事をすることになったことを
考えると、まずは小さなことでも行動をし、動きを完全に止めないことが
次につながると考えています。

未来に向けて、思いをつなげる、という意味でも
たゆみなく「続けること」を心掛けたいですね。

 

 

(2016年04月発行)

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