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いより通信 vol.84 (2012年02月号)

社会保険適用拡大・定年延長に負けない会社をつくる

みなさん、こんにちは。
国会では年金制度改革の議論が白熱しております。AIRY0950.JPG
少子高齢化が進み、年金制度がこのままでは
将来的には維持ができないことは理解できますが
その負担を企業の負担拡大で乗り切ろうというやり方に
かなりの憤りを感じております。

社会保険労務士という仕事をしているので
もちろん年金制度の重要性も理解し
お客様の会社にも適正に社会保険に
加入していただくようアドバイスをしています。

しかし、中小企業を経営されるみなさんには
現在の保険料負担でも限界だと感じています。

今回の短時間労働者への適用範囲の拡大については
飲食店や小売店など各種流通・サービス業に携わっている
お客様については、死活問題です。
これらの業種では、客単価は下がる一方で、営業時間は延び
パート・アルバイトをなんとか駆使してお店を開けている状態です。

先日、自宅近くに新しくできたクリーニングやさんに行ったときのことです。
格安クリーニングのお店なのですが、店員さんが一人しかおらず
開店直後に行ったにも関わらず、なんとお店は閉まっていました。

正確に言うと開けた形跡はあるのですが、「すぐに戻ります」の張り紙があり
店員さんがいなかったのです。
寒い中、店の前でしばらく待っていました。クリーニングしてもらう予定の衣類を
持ったまま出勤することができませんでしたので。

私は店の前で待っていましたが、気の短い人であれば
他の店舗に行ってしまっていたかもしれません。
(私も次からは店を変えようと思っています)

しかし、人件費のことを考えると、店員を一人増やすよりも
お客を数名取り逃がす方が全体としてはプラスなので
このお店は一人体制を取っているのでしょう。
(この一人さえも「店員」として雇用しているのか
個人事業主としてフランチャイズ契約をしているのか不明です)

このように社会保険料の負担が増えるということは
企業側からするとできるだけ人を使わずに
(正確にはできるだけ自社で人を雇用せずに)
事業を運営しようという風潮になります。

それが果たして社会全体にとってプラスになるのでしょうか。

さらに企業の負担増は社会保険料だけではなく
定年延長で年配の社員さんを抱え続けなければならない、ということもあります。

但し定年延長とはいえ、60歳以降もそのままの労働条件で
雇用を続けている会社はわずかで、ほとんどの会社は4割程度賃金をカットした上で
再雇用としています。

考えようによっては、そこそこの給料を提示して育つか育たないかわからない
新たに社員を雇用するよりも、勝手を知った社員をこれまでよりも安い給料で
使う方が会社にとっては得という判断になり、これまた新規の雇用を疎外することになります。

社会保険料そのものが年々上がっていくことは、少なくとも厚生年金については
決まっていますし、高齢化のことを考えると健康保険料も増加していくことは
間違いがありません。

現在加入している人の社会保険料の負担増だけではなく、
適用範囲まで拡大となると、事業の運営方法自体を考えなければならない業種も
出てくるかもしれません。

パート・アルバイトが多い業種で、適用範囲が拡大になったときに
社会保険料の負担を増やしたくないという視点だけで考えると
例えば、以下のような方法が考えられます。

・サービスの質が落ちても店員の数を減らす。
(飲食店であれば食券制にする?)
・直接雇用ではなく、フランチャイズ制にて店舗を切り離し、業務委託にしてしまう
・飲食店の場合、法人であれば強制適用であるが個人経営であれば
社会保険は強制適用ではない

もちろん導入によって、社会保険料の負担増よりも大きなデメリットもあるかと思いますので
各社の状況に応じて慎重にご検討ください。

定年延長については、60歳以上の方に引き続き仕事をしていただくのは
悪いことではありませんが、健康面でのリスクも増えますし、
10年後、20年後の会社を考えたときに、新規採用を控えてまで
雇用延長をしなければならないのかという問題があります。

社内を見渡してみて安心して仕事を頼める人は誰ですか?
何年かにわたって自社の業務に携わって来てくれた社員さんだと思います。
それは、今までその社員さんを育ててきたからこそ、であって
楽な方にばかり流れていても会社の将来はありません。

社員を雇用して新しい風を入れることも
企業の将来を考えれば必須のことなのです。

景気のいいときであればまだしも、現在のこの環境の中で
中小企業の経営者にとっては苦しくつらいことばかりだと思います。

しかし文句を言っていても始まりません。立ち向かうしかないのです。
様々な状況をシミュレーションして分析し、
自社に最適な方法で生き残る会社になる方法を検討してみてください。
 

 


 


 

2月給与の注意事項

今月の給与での改正事項・注意事項はありません。
2012年4月から雇用保険料率が変更(引き下げ)になることが決まっています。


◆一般の事業の場合

旧:平成24年3月まで  従業員負担 6/1000  会社負担 9.5/1000

新:平成24年4月から  従業員負担 5/1000  会社負担 8.5/1000

平成24年度の雇用保険料率(厚生労働省HP)

今月の気づき

先日、『奇跡のリンゴ』の木村秋則さんが作られたリンゴをお裾分けでいただきました。
3年前に私が所属しているe製造業の会で木村さんの講演をしていただきました。
そのときにスタッフとしてお手伝いさせていただいたご縁で、きっと送ってくださったのだと思います。

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りんごを送っていただいた方のブログはこちら

ブログを読むと2年越しで手に入れられた貴重なりんごであることがわかります。
しかも、ご本人が食べたいというよりも、知り合いの病気の子どもさんに食べさせたいので
手に入れたいと思ったとも。

送られてきたりんごを縁者の方に小分けにしてお裾分けされたのでしょう。
ご本人は「ひとつ」食べたと書いておられるので。

木村さんのりんごは市場では買えないものです。
その希少性がわかっているからこそ、できるだけ多くの縁者に「奇跡」を分け与えたいと考えられた
サカエヤさんの新保社長の姿に感服した出来事でした。

何か幸運を手にしたときに、自分の手元にとどめるのではなく
それを分け与えることでさらに幸福を他者に広げることができます。
皆が他者のために、という動きをするようになると、
いずれ自分のところにも幸運が回ってくるようになります。

いただいた3つのりんごは二人の職員さんたちとひとつずついただきました。
自分の手元に残ったひとつのりんごは娘の高校受験の朝に食べさせようと思っています。
「奇跡のりんご」が持つ力を信じて。
 


 


 

(2012年02月発行)

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