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いより通信 vol.66 (2010年08月号)

人の問題は直感が大事

最近、お客様から労務関係のご相談を受けるときに一番気をつけていること。それは第三者から見てその判断をおかしいと思うか思わないかです。

拙著『社員の正しい辞めさせ方』にも書いたのですが、経営者だけが得をする答えを選択した場合、そのときは問題が起きなくても、後々なんらかのトラブルに巻き込まれる可能性が非常に高くなります。

これぐらい大丈夫だろうと思って、ある判断をするとします。文句を言ってくる社員がなかったので、さらにまたやってみる。これを繰り返していると、経営者に対する信頼感は失われ、あるとき大きなしっぺ返しを受けることになります。

例えば、今、巷で話題の未払い残業代請求もかっこたるものです。「うちの業界は9時から17時まで仕事をしてピタっと終わるような業種じゃないねん。社員もそのことはようわかってるはずや」と豪語している経営者がいました。

あるとき、入社をして1年もたたない新入社員が退職し、労働基準監督署に駆け込みました。彼の手帳には、経営者が命じた終業時間後の清掃であったり、日報作成、社内会議などの時間も1分単位で書き込まれていました。

労働時間は社員との約束です。「これだけ仕事をしてもらって、給料はこれだけ支払います。」という労働契約の根幹をなすものです。それを社員が何も言わないからといって、残業代も支払わずに居残って仕事をするのが当たり前の風土を作ってしまうと、不平不満がたまり、爆発したときの収拾に思った以上の時間とお金を取られることになるのです。
まだまだ経営環境が厳しく、苦しんでいる経営者が多くいます。自分がこれだけ苦しんでいるのだから社員にも痛み分けをしてもらおうなんてとんでもない誤解です。

苦しみの痛みわけが許されるのは、社員との強い信頼関係ができている経営者のみです。常に何かの選択をするときには、メリット・デメリットを考え、会社にとってのメリットのみを考えない経営者です。

いい経営者のスパイラルに入ると、社員の生活のことを考えて決断をしていくだけで、社員はそれを恩義に感じ、どんどん会社のために自主的に働く社員に育つようです。先日伊那食品工業株式会社の塚越会長の講演をお聞きする機会があったのですが、まさしくそのことをおっしゃていました。

例えば、できない社員だけ賞与を5万円カットしたとします。会社にとっての5万円は、体制に影響がある金額ではありません。でも社員個人にとっては5万円はとても大きなお金です。
会社が得るメリットよりも社員のデメリットの方が大きくなります。

経営をしているからには法律を守ることは必須です。
それと並行して、何か決断をする際には、自分の行動は人として正しいのか、誰にも恥じることはないのか。社員にとってのデメリットは何なのかをよく考えて行動するようにしましょう。

社員との関係はキャッチボールのようなものです。いい球を投げればいい球が返って来る。悪球を投げれば、相手も意地になって取れない球を投げてくるのです。

人の行動や考え方を変えるのは非常にむつかしいですが、自分の行動や考え方は意識すれば変えることができます。いつもいい球を投げ、社員が経営者であるあなたとのキャッチボールを待ち望むような職場環境にしていきたいですね。

8月給与の注意事項

7月に賞与支払いが合った場合、賞与分の源泉所得税の納付と賞与支払い届の提出をお忘れなく

今月の気づき

7月29日に3冊目の著書となる『「営業ゼロ」で年商2000万 稼げる社労士の集客術』が発売になりました。

今回の本は今までの実務書とは違い、自分の考え方やノウハウを世間に伝えるものです。言葉の使い方ひとつ、トピックの内容ひとつで、言いたいことがうまく伝わったり伝わらなかったりします。担当編集者さんに多大なご苦労をおかけして、難産の末、生まれてきたわが子です。

私も本を書くまで編集者さんって何の仕事をされているのか、具体的には知りませんでした。サザエさんに出てくる、のりすけさんのように、作家先生の原稿を取りにいく人?くらいのイメージでした。

しかし編集者さんは我々著者が書いたコンテンツを、より読者に伝わるように、原稿整理をしてくださるのです。回りくどい言い回しをすっきりさせたり、文と文の間のつなぎ言葉を入れたりです。
この作業で、自分が書いた原稿に命が吹き込まれます。

発売日の前日に担当編集者さんと反省会を行いました。今後、また本を書き続けたいので5つの改善ポイントを出していただきました。

詳細はこちらのブログにあります。
経営者会報ブログ http://iyori.keikai.topblog.jp/blog/103/10021206.html

社労士業務を「本業」それ以外は「本業ではない」と自分では区別していたのですが、お金をもらってやるからには、すべて「本業」であり、本業であるからには、意識を高く持ち、仕入れを怠らないことだと強く感じました。

業務時間のバランスを考えなおしてみたいと思います。

(2010年08月発行)

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