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いより通信 vol.172 (2019年06月号)

休職者等の賞与の査定について

みなさん、こんにちは。
社労士の井寄です。

令和に入って1ヶ月が経過しました。
各種フォーマットの「平成」の文字を
「令和」に都度置きかえる作業が続いております。
(面倒なので西暦記載にしている書類もあります)

さて、夏季賞与の査定時期に入りました。
この時期、みなさまよりご質問をいただくことが
多いのが、休職者および退職者の賞与査定についてです。

それぞれの対応について、私の見解です。

1)休職者について
ア)産休・育児・介護休業者について

賞与算定期間について、勤務されている期間があれば
その期間について査定し、賞与を支給しなければなりません。
7月10日支給の夏季賞与の算定期間が前年12月1日から今年5月末日の会社の場合、
上記期間についての勤務実績に応じて算定してください。
全期間休業されている場合については、会社の査定基準によります。
勤続年数に応じて一定額の最低支給額等がある場合で
全期間休業である場合も支給するとしているケースでは
ゼロにすることはできません。
ただし、就業規則等で、査定期間について全期間休業の場合は、支給対象としないと
している場合は支給ゼロも可能であると考えます。

注意すべきは、算定期間に勤務しているにも関わらず
休業中であることを理由にかなり低額の賞与しか支払わないとなると
育児休業法および雇用均等法で禁止されている
妊娠・出産・育児・介護を理由とした不利益取扱いとされる場合がありますので
注意してください。

 

イ)私傷病休職者について

賞与査定期間について、勤務されている期間があれば
その期間について査定し、いくばくかの賞与を支給することが原則です。
ただし、私傷病休職については、法定で義務化されているものではなく
会社ごとにルールを就業規則で定めて取扱いを決めているものです。
休職期間中の賞与の査定について、就業規則にルールがあれば
それに従うことになります。
産休・育児休業等の休業者との違いは、法律で禁止されている
「不利益取扱い」の問題は生じないということです。

 

2)退職者について

就業規則の賞与の支給要件のところに「支給日に在籍していること」を
要件としている場合は支給日にすでに退職している社員については
支給する必要はありません。
会社の中には、「支給日に在籍していなくとも、算定期間のフル在籍していた場合は
支給する」としている会社もあります。
そうした会社では、算定期間にフルで在籍していた社員については
支給日に在籍してしていなくとも支給する必要があります。

まだ在籍しているが賞与の算定時点で退職が決まっている社員について、ですが、
算定期間の成績等を査定して賞与を支給するのが原則です。
ただし、賞与の査定の要件について、算定期間の成績のみならず、今後将来に向けての
期待分も含めて考慮している場合等については、将来の期待分については
減額することになるでしょう。

稀に会社の就業規則に「支給日時点で退職が決まっている社員について支給しない」としている
ケースもあります。そもそも賞与を支給するかどうか、賞与の査定をどのように行うか
賞与の支給対象者をどのように設定するのか等は会社ごとのルールによります。
「退職が決まっている社員」を対象外とすることが、必ずしも悪ではありません。

ただ、もしそのようなルールがあるのであれば事前に告知しておくようにしましょう。
 

3)中途入社者について

最後に算定期間の途中に入社してきた社員の取扱いですが
こちらも会社のルールによります。
「フルに在籍していなくとも、在籍期間に応じて査定して支給する」としている
ケースもありますし、「算定期間にフルに在籍していることを要件とする」と
している会社もあります。

会社によりますが、算定期間にフルに在籍していない場合は
査定の対象とはせずに、寸志という形で支給するとしているケースが多いように考えます。

 

***

いずれにせよ、ルールを決めて取扱いについて不公平が生じないようにすることです。
ただ賞与額の査定については、査定基準は公平にする必要がありますが
査定の結果、各人の支給額が異なることになるのは、「不公平」ではありません。
賞与を通じて、会社の社員に対する期待と、評価を示すことができます。
小さな会社では特に、賞与支給の際に、「何を評価してこの金額になったのか」について
ひと言伝えることができると、より賞与を効果的に使うことができると考えます。

説明を求められたときに、根拠と会社の考えをきちんと伝えることができるように
しておきましょう。

 

6月給与の注意事項

1)労働保険料年度更新の申告をしましょう。労働保険料の納付期限は7月10日です。
2)6月給与計算が終了したら、社会保険料算定基礎届の作成・提出をしましょう。月額変更の漏れ等に注意してください。
3)夏季賞与の準備をしましょう

今月の気づき

我々社労士業界の繁忙期に入りました。
労働保険料の申告については、準備はほぼ終わっており
申請をするだけなのですが、
社会保険料の算定基礎届が、6月給与の確定後でないと作成できず
提出期限(7月10日)までの期間が短いため、毎年、慌ただしくしています。

それに加えて賞与の支給時期でもありますので
賞与計算をさせていただいている会社様への対応もあります。
賞与についても、ギリギリまで査定で迷われる会社も多く
資料をいただいて計算を終えてから、再度修正となるケースもあり
かなり時間的に追われることが多いです。

そんな中ですが、6月7日から3日間、大阪の中小企業の経営者のみなさん
(製造業の方が中心です)と、沖縄に工場見学に行ってきます。
これまでも、何度かご一緒させていただいており、気のおけないメンバーです。
みなさんの現場での状況を聞かせていただけるのが楽しみです。

 

(2019年06月発行)

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