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いより通信 vol.68 (2010年10月号)

経営者にとって納得がいく給料の支払い方とは

今年に入って、就業規則の見直しと同じくらいの需要があるのが、給与体系の見直しのご相談です。

中小企業は、そもそも余分な社員は抱えていません。今いる社員にスキルアップをしてもらって、できるだけ長く勤めてもらいたいと考えておられるようです。
新規採用で採用コストをかけて、教育訓練を行うことを考えると、今いる社員の離職を防止したほうがトータルコストでいうと安くつくからです。

現状、不景気が続いているので、社員の離職率も下がっています。私の顧問先のお客様でも、ここ1年全く人の出入りがない会社さんもあります。
社員構成が膠着化し、賞与を出せず、がんばった社員と、もう少しがんばって欲しい社員と、給料で差をつけることができずに、悶々とされている経営者も多いようです。

中小企業の場合、中途採用の社員がほとんどですので、入社時の給料の決め方は、ほとんど「時価」です。すなわち採用が困難な時期に入社した社員は比較的給料が高く、今のように採用がやりやすい時期に入社した社員の給料は抑え気味に設定されて、そのまま年月が経過しているのです。

賞与が出せるときであれば、賞与でできる社員を評価したり、早めに昇格をさせて、アンバランスの解消を図ることができました。しかし賞与原資がなく、昇格による昇給原資もない中で、どうすればアンバランスを解消できるのか、経営者は頭を悩ませているようです。

さらに2代目経営者からの相談で多いのが、給料を決める基準そのものがわからないというものです。そういった会社の賃金台帳を見せていただくと、見事に各種手当てがズラリと並んでいるケースが多々あります。

「物価手当」「衣食手当」「特殊勤務手当」など。支給基準も明確ではなく、ただ今までの慣例で、そのまま全員に対して定額で出し続けているというようなケースです。

手当が多岐にわたっている会社の多くは、退職金や賞与の算定の際に基本給だけをベースにしているので、基本給を上げないために手当でカバーしているようです。

しかし働きや役割、個人の能力を評価して給料に反映したいと考えたときに、意味のない手当は廃止すべきでしょう。

会社を経営する限りは、タダで人を雇うことができる、と考えるような経営者は誰もいません。できるだけコストをかけたくない、と思っているかもしれませんが、会社に利益をもたらせてくれる社員については、それなりの待遇をして、さらに頑張って欲しいと考えているはず。

給与体系の見直しをする場合は、まずは現状分析をし、3年後、5年後、10年後のあるべき人員構成と売上げ計画からの人件費予算を組みます。

基本的には、総額人件費を下げるという選択はできないことや、新制度導入で給料が下がる人については、一定期間、調整給などをつけて補填が必要になるので、一時的に人件費負担が増えることなどを考えた上で、実施してください。

いずれ、手をつけたいと思っていても、時間が無駄に経過するだけです。歯医者さんの治療と同じで、先延ばしにしても、痛いと感じる期間が長くなるだけです。ほっとけば自然治癒することはありません。

人の入れ替わりが少ない今の時期がチャンスです。新給与体系を導入しておけば、次から入社する人には新給与体系をすぐに適用することができるのです。

私自身、現在2社のお客様の給料体系の見直しに関わっていますが、正直大変です。アンバランスの解消が目的である限り、「現状でもらいすぎ」になっている社員に対する対応をどうしていくのか、など、あの手この手で、結果として社員にも納得してもらえる、わかりやすい評価基準を作成しようと経営者と知恵を絞っています。

どうも給料の決め方がスッキリしないとお考えの方がいらっしゃいましたら、ぜひ一度ご相談ください。お客様のニーズに合わせてご提案をさせていただきます。

10月給与の注意事項

  1. 9月から厚生年金保険料率が変更になっています。翌月給与で社会保険料の徴収をされている会社は10月支給分から変更してください。
    →日本年金機構のホームページに保険料額表がアップされています。
    http://www.nenkin.go.jp/main/employer/index6.html
  2. 翌月給与で社会保険料の徴収をされている場合、算定の結果が10月給与から反映となります。
  3. 最低賃金が変更になります。最低賃金を目安にアルバイトの時間給を決めておられる場合はご注意ください。最低賃金は本社の所在地ではなく、事業所がある所在地で適用になります。
    ここに示しているのは地域別のものですが、産業別の最低賃金もあり、いずれか高い方が適用になりますのでご注意ください
    大阪/779円(平成22年10月15日から)京都/749円 兵庫/734円(いずれも10月17日から)滋賀/706円(10月21日から)
    ■地域別の最低賃金の詳細は厚生労働省のホームページでご確認ください。
    http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-02.htm
    ■産業別の最低賃金はこちらでご確認ください
    http://www2.mhlw.go.jp/topics/seido/kijunkyoku/minimum/minimum-19.htm

今月の気づき

7月29日に新刊『稼げる社労士の集客術』が発売になってから2か月。怒涛のような日々でした。大阪と東京で出版記念講演とパーティをしたので、その準備で大変でした。

誰にパーティをやれと命じられたわけでもなく、自分でやると決めたのですから、泣き言を言えません。大阪も東京もたくさんの人に集まっていただき、またスタッフとしてたくさんの方のお力添えをいただき、無事終えることができました。

パーティの準備でバタバタしながら、一方では新刊の売れ行きに一喜一憂の日々でした。1冊目の『小さな会社の人の雇い方』が4刷、『社員の正しい辞めさせ方』が5刷と版を重ねる中で、新刊は発売2か月になりますが、まだ増刷の知らせがありません。

出版業界も厳しいので、そうやすやすとは増刷はしてもらえないようですが、今まで以上に渾身の力を振り絞って書き上げた本ですので、増刷がかかって地方の小さな本屋さんにも1冊必ず置いてもらえるようになりたいなーっと心から願っています。

アマゾンのレビューも今までの3冊の中では最多の8となっています。(9月21日現在)
ツイッターやブログでのご紹介も、こちらが恐縮するほどたくさんいただき、本を手に取ってくださった方には喜んでいただいているようです。

■稼げる社労士の集客術ご感想集
http://blog.livedoor.jp/iyori_nami/archives/51695797.html
http://blog.livedoor.jp/iyori_nami/archives/51709244.html

増刷まで、あと一押しというところだと思いますので、引き続き応援していただきますようお願い申し上げます。

士業の勉強会などで、今回の本のテーマで講師をさせていただく機会がありましたらお気軽にお声がけくださいね。(地方の場合は交通費をご負担願うことになりますのでご了承ください)

(2010年10月発行)

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