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いより通信 vol.225 (2023年11月号)

パート労働者等への「年収の壁・支援強化パッケージ」について

みなさん、こんにちは。
社会保険労務士の井寄です。
 

年末が近づきました。
みなさま、お忙しくされてますでしょうか。

さて、先月のいより通信でも触れておりました
パート労働者等への社保加入適用促進のために政府が打ち出した
「年収の壁・支援強化パッケージ」の詳細が発表されています。

個人的なまとめになりますが以下です。

1)支援の目的
◎パート労働者への社会保険適用拡大の促進
◎パート労働者の勤務可能労働時間数の「上限」突破

2)目的実現(パート労働者への社保加入促進)のために
①労働者の手取り減にならないために、企業に対し保険料相当額の手当の支給を促す

⇒企業にとっては新たに社保加入した労働者に対する社会保険料負担+手当支給で負担増

⇒企業の負担増に対する助成として

 ①キャリアアップ助成金の要件緩和
 ②社会保険促進手当を社保料適用除外賃金とし社保料負担を軽減(2年間のみ)

 

3)それでもなお配偶者の健康保険の扶養の範囲(年収130万円未満)で働きたいパート労働者への対応

⇒一時的な残業増などにより年収が130万円を超えても事業主の証明により
配偶者の健康保険の扶養家族を続けることができる制度の創設(2025年までの時限措置)

注)年収130万円未満であっても、パート労働者自身が、
勤務先企業において社保加入要件を満たす働き方をしている場合は、
自社で社会保険に加入する必要があります。
配偶者の扶養に入るか、自分で社保に加入するかの選択はできません。

 

4)制度解説
①キャリアアップ助成金の利用
 助成金申請のためには対象従業員への賃金増が要件となっているため企業の人件費負担は増えます。
対象従業員のみの賃金増だと従業員全体の均衡が崩れるという意味で
助成金対象以外の従業員の賃金も増額させるとさらに人件費負担が増えます。

助成金は一時的な補助でしかありません。
「制度改定が目的で結果として助成金申請ができる」パターンはよいですが
「助成金申請が目的で、制度改定をおこなう」の場合は、長期的な視点で
制度改定による負担増を事前に検証する必要があると言えるでしょう

②社会保険促進手当
 新たに社会保険適用対象となった労働者であって、標準報酬月額が10万4千円以下の者に対し
社会保険料相当額(おおよそ賃金額の15%)以上を「社会保険促進手当」として支給した
場合に、本人負担の社会保険料額を上限として、保険料算定の基礎となる報酬額に
含めずに社会保険料が計算される仕組みが新たに設けられました。


 既に社会保険に加入済みの労働者に対しても企業が特例的に「社会保険促進手当」を
支給する場合も、同じ扱いになります。
(*標準報酬月額が10万4千円以下の労働者に限る)
負担の軽減は最初の対象月から2年間であり、期間の途中で対象労働者の
標準報酬月額が10万4千円を超えた場合は、当該手当は
保険料対象の基礎となる報酬額に含めて社会保険料の計算がなされることになります。
(社会保険料社会保険料軽減措置の適用はなし)


社会保険促進手当の支給は、義務ではなく、会社ごとに導入するかどうかを
決めることができ、導入した場合で、他の要件も満たした場合は、①の
キャリアアップ助成金の申請も可能となります。

こちらについては、キャリアアップ助成金とセットで導入する場合は
企業にとっては人件費増額分の一部を助成金で補填してもらう形となりますが
基本的に、会社の負担は増える制度となります。

さらに対象労働者が、報酬月額10万4千円以下の者となるため
限定的であり、報酬額がそれを超えるパート労働者も手当の対象とした場合は
会社のみならず、従業員の社会保険料負担も増える形になります。

③年収130万円超となっても事業主証明で配偶者の社保の扶養として扱うこと
 臨時的な残業、スタッフの欠員等で年収制限(年130万円)を意図せず超えてしまった
労働者の救済策です。労働契約において、月10万8千円未満を明らかに超える契約内容の
場合や基本給や手当増により恒常的に月10万8千円を超える賃金を得ており、
年130万円を超えることが明らかである場合は対象とならないと考えられます。

 会社の繁忙期にどうしても人手が足りずにパート従業員に残業命令を出したが
年収制限を理由に断られていたなどのケースへの救済策と言えます。


5)総括
 2025年度の年金制度改革に向けて、短時間労働者にもできるだけ
社会保険に加入してもらうための措置であると考えます。
一旦社会保険に加入してしまえば、「年収の壁」など気にせずに
働けば働くほど労働者自身の収入も増え、社会保険料の徴収額も増えるからです。

 その実現のためには、企業の協力・理解が必須であることから、助成金を準備して
協力を促す政策であると言えます。

 企業ごとに、パートタイム労働者に対する考えや、役割が異なると思いますので
「助成金があるから」「新しい制度だから」に囚われることなく、自社として
どうしたいのかを考えて、選択されることをおすすめします。

 

11月給与の注意事項

1)年末調整の準備をしましょう。

国税庁「年末調整がよくわかるページ」

*令和5年度の年末調整は令和4年度と同じ手順です。

今月の気づき

大阪は急に寒くなりました。
みなさんのお住まいの地域はいかがでしょうか。

私は羽根布団をクリーニング屋さんに預けており
受取を10月末で設定しておりましたので
すごく寒かった夜は、夏布団の上に毛布をかける
作戦で乗り切りました。

数日前に、クリーニング屋さんに様子を聞きに行ったところ
お店には既に布団が届いていたため持ち帰り
今は寒くなっても安心です(苦笑)

 

(2023年11月発行)

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