経営者が知っておきたい労務管理のポイント

会社を設立しました。
就業規則の作成、届出や社会保険の手続きは必要ですか?

就業規則の作成、届出について

就業規則の作成については、労働基準法に定めがあります。常時10名以上の従業員がいる場合は作成及び事業所を管轄する労働基準監督署への届出が必要になりますが、それ以下の場合は特に定めはありません。

最初から従業員が10名以上いる場合を除いて、最初からいきなり就業規則の作成というのも大変だと思います。就業規則というのは職場のルールを文章にしたものです。会社を始めたばかりであれば、勤務時間や休日もまだきちんと定まっていない場合もあるでしょう。給与体系についても同じです。就業規則がなくても労働基準法は守らなければなりませんが、まだ職場のルールがきちんと定まっていない間から就業規則に書いて文書化してしまうのはどうかと考えます。

但し、従業員を雇い入れるときには雇用契約書(労働条件通知書)が必要です。その中には就業時間や休日について記載しなければならないので、最低限のルールを決めておくことが必要です。また一旦決めたルールを変更する場合は個別に従業員の同意を得ることが必要になります。

社会保険の手続きについて

(労災保険)

まず労災保険についてですが、労災保険については1日のアルバイトであったとしても給与を支払う対象の人がいれば加入しなければなりません。
保険料は全額会社負担で、業種によって保険料が異なります。製造業や運送業、建設業など事故発生の確率の高い業種については、保険料率も高くなっています。
経営者や経営者の家族、役員については労災保険に加入することはできません。

労災保険に加入していると通勤の際のケガや、業務中のケガ、業務が起因の疾病についての補償を受けることができます。万が一の事故に備えて、一人でも従業員を雇っているのであれば労災保険には必ず加入してください。未加入で事故が発生した場合、従業員に対して補償はありますが、経営者にペナルティが課せられます。

経営者も労災保険に加入したい場合は、労働保険事務組合に労働保険事務の委託をする必要があります。経営者については通勤災害に関する補償はありません。

労災保険料については、加入する際に3月までの見込み額を前払いします。毎年4月に前払い分の精算と翌年1年間(4月〜3月)の見込み額を計算し、5月20日までに保険料を納付することになります。(年度更新と呼んでいます)
保険料の金額によっては3回に分けて納付することも可能です。
労災保険の手続きの窓口は事業所を管轄する労働基準監督署になります。(都道府県労働局のHPで管轄の労働基準監督署を調べることができます)

(雇用保険)

雇用保険に加入できるのは週20時間以上勤務していて、1年以上雇用の見込みがある従業員です。現在は従業員が6ヵ月雇用保険に加入していれば、失業給付を受給することができますが
平成19年10月以降は、退職後に失業給付を受給するには1年以上雇用保険に加入する必要があります。
経営者、経営者の家族、役員、昼間学生等は雇用保険に加入することができません。

雇用保険に加入することの経営者にとってのメリットは、要件を満たせば、各種助成金を申請することができることと、ハローワークに求人が出せることです。ハローワークへの求人は無料で出すことができます。
その他、育児休業者、介護休業者や高年齢の方で60歳以降お給料が下がった従業員に対するお給料の補填をしてくれる制度もあります。

保険料については従業員の負担があり、毎月の給与から差し引くことになります。
お給料の額に一定の保険料率を掛けて計算します。
保険料の納付については、労災保険料と一緒に1年に1回計算をして納めることになります。
雇用保険の手続きの窓口は事業所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)になります。
(都道府県労働局のHPで管轄のハローワークを調べることができます)

(社会保険〜厚生年金保険・健康保険)

労災保険、雇用保険については、該当する従業員がいなければ加入する必要はありませんが
社会保険(厚生年金保険・健康保険)については、法人は強制適用であるので、経営者と家族だけで経営していても加入する必要があります。

保険料は労使折半で、お給料の額を「標準報酬月額表」というものに当てはめて計算することになります。通常お給料の金額に大きな変動がなければ、加入したときに決定した保険料を毎月お給料から差し引くことになります。
その後は4月5月6月のお給料の金額を元に1年間の保険料が決定されます。(算定基礎届といいます)賞与にも保険料がかかります。

保険料率については3月に健康保険料及び介護保険料、9月に厚生年金保険料の料率の見直しがありますので、注意が必要です。毎月社会保険事務所から送付される保険料の納入告知書と一緒にお知らせが同封されていますので、注意をして見るようにしましょう。
保険料の支払いは前月の保険料を当月の月末に支払うことになります。

社会保険に加入できない人は通常の従業員と比べて勤務時間、勤務日が3/4未満の従業員です。
経営者(代表取締役)は必ず加入しなければなりません。役員の家族、役員についても常勤であれば加入する必要があります。

社会保険に加入することのメリットは、厚生年金については、国民年金と比べてかなり給付が手厚いということです。従業員に万が一のことがあった場合、遺族厚生年金や障害厚生年金は
加入期間が短くても最低300月(25年)加入していたとみなして、年金額の計算をしてくれます。

遺族厚生年金については、国民年金だけの場合と比べて受給できる遺族の範囲が広いことが特長です。国民年金だけに加入している場合は、遺族年金を受給できるのは、「(18歳未満の)子」もしくは「(18歳未満の)子のある妻」となっていますので、かなり受給できる遺族が限られますが、厚生年金の場合は要件さえ満たせば、妻のみの場合や、夫、父母、孫または祖父母も受給できる場合もあります。

障害厚生年金についても、国民年金だけの場合は障害等級が2級までしかないので、かなりの障害にならないと認定はされませんが、厚生年金に加入している場合は障害等級が3級までありますので、認定がされやすくなります。

また市町村が支給している児童手当についても厚生年金加入事業所に勤務している場合は
年収要件が少し緩和されます。厚生年金に加入している事業所が「児童手当拠出金」というものを負担しているからです。

健康保険についても国民健康保険と違い、病気や出産で仕事を休んだ場合の保障があります。
会社にとっても病気や出産で休職する人に対して給与の支払いの心配をしなくてもよくなります。

会社にとってのメリットは、やはり求人がしやすくなるということです。
いい人材に来てもらおうと思えば、「当然加入」である社会保険には加入しておく必要があります。大企業からの転職組にとっては、社会保険制度に加入していることは「当たり前」だからです。

社会保険に加入すると従業員一人あたりのコストが増大します。
お給料の額プラス約12%の保険料負担が企業にかかります。
しかしその分も必要経費として、人件費に組み入れた上で考えたいですね。

社会保険の手続きの窓口は事業所を管轄する社会保険事務所になります。
(都道府県社会保険事務局のHPで管轄の社会保険事務所を調べることができます)